爆走は乙女のしるし

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 彼がブリ高のS王子と知った翌日とその次の日も。わたしは放課後、鈍行電車に乗っていく、ひと目惚れの彼を見送っていた。  一人ではない。保護者つきだ。  真凜と奈雪がわたしに付き添っていた。  わたしが暴走して、各駅停車に乗り込まないように。彼女たちは見張っていた。  やだな。そんなストーカーっぽいことなんてしないから。大丈夫。安心して。  そう言って、彼女たちを落ち着かせていた。  彼女たちにしてみれば、わたしは今にも電車に乗り込んで、彼の家まで行きそうな目で彼をロックオンしていたのだろう。  だって、恋しちゃったんだもん。  付き合えるなんて思っていない。  見るだけ。  それだけで。  満足なんだから。  仕方ないな。  真凜も奈雪も、慈しむ眼差しでわたしを見ていてくれた。  なのに。  わたしったら。  ジーザス。  どうかお目こぼしを。  学校が休みの土曜日。  真凜や奈雪の監視の目がなかったからではありません。ただ、わたしはあのコロッケが食べたくなった。  だから、通学定期を使って。  途中で鈍行に乗り換えて。  ここまで、コロッケを買いに来てしまいました。ジーザス! マジでそれだけです。  ただ。  そこに誤算がありました。  あろうことか、彼が。  彼がコロッケを売っているお肉屋さんにいたとは。すき焼き用の牛肉を買っていたとは。  偶然の邂逅、めぐりあいに。  わたしは思わず、涙するところでした。  だから。  つい。  牛肉を買って帰路につく彼の後ろを。  知らぬ間に、着いて歩いていました。  ホントです。  彼が振り返って、 「俺に、なんの用?」  訊かれるまで、まるで、気を失っていたような気がしています。  ジーザス!  ウソではありません。
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