爆走は乙女のしるし

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「で、俺に惚れたのは一緒にいた、あのツインテールの背の低いほうか。高いほうは低いほうばかり見てたから、違うと思うが」 「はあ。そうですね」  そこに、わたしは含まれていない。  見事に眼中外ということか。  ここまでいくと、いっそ清々しいではないか、わたしの恋心よ。中途半端に泣く気すら起きない。 「あなたに迷惑をかけることは何もないです。安心してください」  すらっと言葉が口を突いて出てきた。  胸の内で盛大に吐息して、嘆いた。  わたしと友だちに気づいていた。  だけど、わたしだけ、目に入っていなかった。  だよね。  女子高だから気にならなかっただけで。  真凜は爽やかな、万能女子タイプ。  奈雪は柔らな雰囲気の可愛い女の子。  わたしは平凡で、景色に埋もれしまう。  風景の中に溶け込んで、透明になっていたらしい。彼の中では。  他の男子が見ても、そうだったのだ。  思春期になって、気になる男子にわたしから声をかける勇気などなくて。「君が気になるんだ」などと、声をかけられたことも一度もない。  だから恋心を抱く相手と話すなんて。  わたし歴史上、初めてのことだから。  むなしい結果に終わりそうだけど、これはこれでいい思い出にできる。  できると思ってこの場を去ろう。  わたしの想いにまったく気づかない。  さすがにS様。ドS王子だけはある。  わたしの心はズタズタだ。  だけど。  しばらくはS王子との出会いを掻き抱ける。痛む心を慰めて居られる。 「おまえ、自己完結しようとしてるだろ」  俺様、S王子が突如、そのようにおっしゃられた。
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