11人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、俺に惚れたのは一緒にいた、あのツインテールの背の低いほうか。高いほうは低いほうばかり見てたから、違うと思うが」
「はあ。そうですね」
そこに、わたしは含まれていない。
見事に眼中外ということか。
ここまでいくと、いっそ清々しいではないか、わたしの恋心よ。中途半端に泣く気すら起きない。
「あなたに迷惑をかけることは何もないです。安心してください」
すらっと言葉が口を突いて出てきた。
胸の内で盛大に吐息して、嘆いた。
わたしと友だちに気づいていた。
だけど、わたしだけ、目に入っていなかった。
だよね。
女子高だから気にならなかっただけで。
真凜は爽やかな、万能女子タイプ。
奈雪は柔らな雰囲気の可愛い女の子。
わたしは平凡で、景色に埋もれしまう。
風景の中に溶け込んで、透明になっていたらしい。彼の中では。
他の男子が見ても、そうだったのだ。
思春期になって、気になる男子にわたしから声をかける勇気などなくて。「君が気になるんだ」などと、声をかけられたことも一度もない。
だから恋心を抱く相手と話すなんて。
わたし歴史上、初めてのことだから。
むなしい結果に終わりそうだけど、これはこれでいい思い出にできる。
できると思ってこの場を去ろう。
わたしの想いにまったく気づかない。
さすがにS様。ドS王子だけはある。
わたしの心はズタズタだ。
だけど。
しばらくはS王子との出会いを掻き抱ける。痛む心を慰めて居られる。
「おまえ、自己完結しようとしてるだろ」
俺様、S王子が突如、そのようにおっしゃられた。
最初のコメントを投稿しよう!