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着いたのは小さな児童公園。
ベンチが二つ。階段と滑り台がついているコンクリート製の山は、彼の足だと五歩もかからずに登れそうだ。
高低差のある木の切り株を模したものが十個ほどあり、その一つに彼が腰掛けた。斜め前の切り株をわたしに勧めた。
「取り引きしないか?」
さっちゃんのS様が、妙なことを口にした。わたしはまばたきを何度もした。
彼が、ああ、と言う顔をした。
「おまえの名前、聞いてなかったな」
彼がわたしを認識して、名前を聞いた。
「怒らないし、俺をストーカーしようとしてたことも誰にも話さない。だから、俺と手を組もう」
わたしの目を見つめてきた。
やっぱステキだ。麗しい顔をしている。
「あの、わたし、津田羽那です。取り引き、って」
言葉に詰まる。
カッコよくて目を惹く彼だが、身の危険を感じることはお断りしたい。完璧に腰が引けている。
「ハナと俺は呼ぶ。おまえは俺のことをサトシと呼び捨てにしろ。俺とおまえ、付き合おう」
「はい?」
どのような経緯で、わたしはあなたのお気に入りになった? つい先ほどまで、わたしはストーカーで、透き通った存在だったはずで。
「俺の名前、江角慧っていうの知ってるな?」
わたしは目を合わせたまま、うなずく。
すると彼は、先ほど出会った姉との間で起きているバトルを、切々と訴え始めた。
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