爆走は乙女のしるし

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「つまり、可愛い子を連れているあなたと」 「サトシだ。ちゃんと名前を呼べ」  うはあっ。  そこでチェック入れますか! 「……サトシと」  慣れない羞恥心で、口から炎が出そうだ。  一回、深呼吸しておこう。  すー。はー。 「サトシを見かけると、女の子の目の前でいちゃもんつけたり、わざといちゃいちゃしてくると」  さすがドS王子様。  恋に免疫のないわたしに、男子の名前を呼び捨てにさせるとは。わたし、いきなりの言葉プレイにたじたじです。顔真っ赤です。  そしてドS王子の姉様も凄そうだ。  というか、サトシのあのご高名は。  もしかして、姉様のせいでは? 「姉ちゃんがマジ面倒くさい。だからハナの友だちがどんなに俺のことを思っても、付き合う気は起きない」 「じゃあ、わたしと付き合うっていうのは」 「おまえ、俺のことドS王子として見下げてるだろ? だからいいんだ。姉ちゃんがおまえを気に入ったみたいだし。友だちとして連もうぜ」  つまり、本気で付き合う彼女ができるまでのダミー的存在で居ろと? 「ごめん。それはちょっとムリ、かな」 「ハナの友だちには俺から上手く言うから」 「恋をあきらめろって?」 「俺は前々からハナが気になっていた。視線を感じていた。偶然道で出会って、俺から声をかけた。……そう言うよ」  すらすら言い訳できるモテモテ王子様。  女の子の眼差しの先がまるでわかっていない。 「ダメなんだ。あなたに恋していたのは、友だちじゃないから。ごめん、協力できない」  居たたまれなくて、わたしは駆け出した。  駅に向かって走る。  鈍行電車に乗る。  バカだ、わたし。友だちから始まって恋人になればよかったのに。  だけど、わたし。  友だちを裏切るようなことはできない。  そんなことを勧める人は信用できない。
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