鈍行電車から急行列車に

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「付き合ってやんない。って言ったら?」 「付き合ってあげると言ってくれるまで、跡を追う」 「ストーカーだね」 「恋の狩人と呼んでくれ」 「恥ずかしい言葉、サラッと言えるんだね」 「おまえも、ハナもそうだったんじゃないかと思えたのは、思い違いだった?」  わたしは恋のハンターなどではないが。  訂正よりも彼の手。指先。真っ赤だ。  寒さで、かじかんでいる。 「手袋、どうしたの」 「ハナときちんと話しておかないと、もう二度と話せないかもと考えてたら。玄関に忘れてきてしまったらしくて」  今日はとても寒いのに。 「家に家族が居るから、今日はまだ入れてあげられない。根性直せたら、入れてあげる」  暖かい家に招けないから。  だから今は。 「わたしの手袋、貸してあげる。明日、返して」 「えっ。貸してくれる?」  わたしは手袋をはずす。  サトシに渡す。 「温かい。これ、ハナのぬくもりだ」 「恥ずかしいこと、言わないで」 「そう? 俺、こんなにあったかいと思ったことなかったから」 「はいはい、また明日会おうね」  わたしは約束する。 「おうっ、また明日」  わたしの手袋をはめた手で。  彼が手を、わたしへと振った。  わたしの心は。  彼のぬくもりでいっぱいとなった。                                    了
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