11人が本棚に入れています
本棚に追加
「付き合ってやんない。って言ったら?」
「付き合ってあげると言ってくれるまで、跡を追う」
「ストーカーだね」
「恋の狩人と呼んでくれ」
「恥ずかしい言葉、サラッと言えるんだね」
「おまえも、ハナもそうだったんじゃないかと思えたのは、思い違いだった?」
わたしは恋のハンターなどではないが。
訂正よりも彼の手。指先。真っ赤だ。
寒さで、かじかんでいる。
「手袋、どうしたの」
「ハナときちんと話しておかないと、もう二度と話せないかもと考えてたら。玄関に忘れてきてしまったらしくて」
今日はとても寒いのに。
「家に家族が居るから、今日はまだ入れてあげられない。根性直せたら、入れてあげる」
暖かい家に招けないから。
だから今は。
「わたしの手袋、貸してあげる。明日、返して」
「えっ。貸してくれる?」
わたしは手袋をはずす。
サトシに渡す。
「温かい。これ、ハナのぬくもりだ」
「恥ずかしいこと、言わないで」
「そう? 俺、こんなにあったかいと思ったことなかったから」
「はいはい、また明日会おうね」
わたしは約束する。
「おうっ、また明日」
わたしの手袋をはめた手で。
彼が手を、わたしへと振った。
わたしの心は。
彼のぬくもりでいっぱいとなった。
了
最初のコメントを投稿しよう!