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わたしに熱い想いを押しつけるように。
彼は電車の中へと去っていった。
発車の音楽がなる。
ドアが閉まる。
各駅停車。普通電車の中の彼。
向こう側のドア付近で立っている。
電車がゆるやかに走り出す。
彼の顔。もう見えない。
しまった。
彼に見惚れていないで、一緒に乗って行けばよかった。
そんなことに気づけたら、わたしはホームに立ち尽くすなど、してない。
経験値が不足している……ほとんどないわたしに、即時対応などという高度なワザは、できない。思いつきもしない。
だけど、大丈夫。
電車の窓から、道を歩いている彼を見つけたわけではない。わたしが下校時に使っているホームで見かけた。時間もわかっている。
明日は三十分前から待ってみよう。
一時間。持ち続けてみる。
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