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「それで一週間経っても名前すらわからないと」
「ようやく、わたしたちに援護を求めたのね」
「もっと早くはわかると思えたんだ」
呆れる真凜と奈雪に、わたしは言い訳する。
実際、わたしは努力した。
一時間前から待機して一時間後まで待った。三日間ホームに立った。会えなかった。
学校に行かない土日に一人作戦会議を開き、改札口で待つ、と決定した。
月曜日は彼の高校が代休だったらしく、同じ制服姿が一人もいなかった。そう言えば朝、あそこの制服を見かけていなかった、と自分のうかつさを恥じた。
火曜日。彼がいた!
だが、改札口の手前にいたわたしがモタモタしている間に電車が来て、彼は乗っていってしまった。
水曜日。またもや彼、発見。
わたしは構内で彼を待ち伏せていた。
そういうときに限って、わたしは友だちに呼び止められてしまった。
だから、わたしはうらめしそうに嘆く。
「あと一歩だったんだよ」
君たちのせいだからね、と目の前を通り過ぎた王子様に未練たっぷりなことをうめいた。
「わかった。声をかけて悪かった。羽那がわたしらを無視しなかった友情は認めよう」
「それで、顔とか体格の特徴は?」
二人が興味津々で、耳を傾けた。
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