こんなことって、あるんだ

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 頭は染めていなくて真っ黒。てっぺん長めの両サイド刈り上げ。  どちらかといえば、面長。目は二重まぶたで切れ長。鼻筋が通っていて、くちびるは薄め。肌がきれい。 「首が長くて手足も長いの。もちろん背も高いよ。マントを羽織らせて馬に乗せたら。まんま王子様。あれで惚れるなと言われても困る。それくらい、輝いてた」 「……そんな王子様と、恋人同士になりたいと」  真凜が冷静にツッコんでくれた。 「わかってるよ。凡人のわたしとは合わないって。きっと綺麗な彼女がいると思う。けど。そっと見ていたっていいじゃない?」  見るために、どこに家があるのか知りたい。  それは罪? 「一歩間違えば、ストーカー行為になるよ」 「知りたいだけなんだ。あんなステキな人とお付き合いできるなんて思ってないし」 「それ、約束できる?」 「できる!」  わたしは真凜と奈雪に誓う。  彼の家を知っても、押しかけない。  二度と行かない。迷惑をかけない。  わたしはただ。  彼と恋人同士設定の。  甘い妄想をしたいだけ。  それ以上のことは望まない。 「わかった。明日から彼を一緒に追っかけてあげる。だから、暴走しちゃダメだよ」  優しい友だちが協力を約束してくれた。  次の日。  わたしたち三人は、彼と遭遇した。  あの人。  わたしが彼を指差すと、 「あれ? あいつはダメだ」 「わたしもやめといたほうがいいと思うよ」  友人二人が彼に、不可を出した。
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