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隷獣愛護団体カーマインがその噂を広め始めたのは、皆人が団員として活動し始めてからだった。それまでのカーマインはある種ゴロツキの集まりでしかなかった。それでも皆人がこの場所を選んだのには訳があった。
「皆人、データの振り分けの進捗は?」
振り返れば、笑みを浮かべる蝙蝠。彼の笑みに答える。
「ほとんど終わりましたよ。ですがこの情報……信用できますか?」
皆人は、自らの疑念を顕にした声でセレスに尋ねた。
「構わん、構わん。多少リスクがあっても、今はこれしかないちゅうことは分かっとうからのぉ」
にぃと釣り上げられた唇に、彼には失敗する懸念などないのだろうと思った。その愚かなまでの純粋さや自信が彼の魅力であり、そして欠点だ。
「貴方の尻拭いをするのは私なのに」
「それもお主が望んだことじゃろう、その実わしを駒にしてるようなもんの癖に」
くくっと喉を鳴らして応えるセレスが、強い力で皆人の腕を掴んだ。彼の手のひらは熱く、その性格を現すようだった。そして、無遠慮に掴まれた手の痛みから、相手がどのように自分を扱っているかがよく分かった。
「それが貴方と私の契約関係でしょう、所詮」
セレスは、強い力で掴む手とは反対の手で、優しく皆人の頬を撫でた。性的な匂いを孕むそろりとした触り方に、背筋の毛が逆立つ。それを嫌だと思ったことはないが、その粘っこく張り付く感触は快くはなかった。あえて色気のない言い方をして口角をあげる。
「性欲処理ですか」
「野暮じゃのぉ」
セレスの唇が皆人のものに重なる。その関係もまた、彼と出会った時から当たり前のように成り立っていた。そこに愛情という橋がなくても行われる、いわゆるセフレというのが一番表しやすい言葉だった。熱い唇が離れた途端、皆人は憎まれ口を叩いた。
「野暮でどうもすみませんね」
「黙ってれば綺麗なのに」
ぼやくセレスに、あくまで皆人はそのスタンスを変えることはなかった。
「私の弟はもっと綺麗ですよ」
愛しい弟の美しい青を思い浮かべながら、皆人はセレスの力に従いその肢体をデスクの上に投げ出した。
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