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「そんなこと、ありませんよ」
しかし、その言葉に何一つ信憑性がないのは皆人も自覚していた。皆人は、隷獣の自由を求めてセレスと出会ったが、それを手に入れるためであったら別にセレスでなくてもよかったのは事実だ。
しかし、今セレスにどのような感情を抱いているかはまた別の問題だと皆人は思っていた。それをセレスに伝えないのは、あくまで皆人の目的も理由もセレスと似たようなもので、互いに利用し合う関係であるという事実はどこまでいっても変わらないからだ。どんな感情をセレスに抱いていようとも、その目的と比べたら優先順位が落ちることを自覚しているからだった。
「私は、決して貴方を裏切らないので」
「わしも信頼しちょる」
信頼の二文字は、誰よりも利害関係が一致しているということであり、それ以上の意味はなかった。二人の関係は、月明かりの照らす中そっと目配せをするような、そんな仄暗い関係だった。
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