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正当防衛のキス
得体のしれない相手からの電話はとらない方がいい。それは異世界への招待状かもしれないから。電話の先には十代前半でパッチリ眼をした金髪ツインテールの魔導士がいるかもしれないから。
俺はその自称魔導士の女の子の両肩をしっかり掴んだ。そして永遠の愛を誓う呪文を唱えた。
「リム・エル・フォア・フィール」
目の前の女の子は呪文の意味と、これから自分に降りかかる事態を分かっていない。きょとんとした目で俺を見上げている。
肩を掴む手に力が入った。その子の小さい鼻先に顔を近づける。ふわっとした甘い香りが届いた。女の子が驚きで目を見開く。唇と唇が触れ合った。その子のぷっくりとした柔らかい唇の感触が伝わってくる。俺たちは暖かい光と渦巻く突風に包まれた。つないだ口から流れる水のような力が生まれた。それは喉へと伝わり体の奥底へと染み渡っていく。二人の感覚が一瞬シンクロしてお互いの境界が曖昧になった。魔法の力によって俺とその子は繋がった。
こんなところで殺されてたまるか。これは正当防衛だ。
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