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背後から大型のトラックがやってきて、俺のすぐ横を通り過ぎた。背中を押してくれるような風が後からやってきた。ふと妹と幼馴染の顔が浮かんだ。俺のことをすぐ近くで応援してくれている二人の女の子。彼女達に支えてもらったからこそ、俺は今まで頑張ってこれた。でもそれと同時に、期待に応えなきゃいけないという心の圧力から、逃げ出したくなる夜もあった。今日はそんな夜だった。
考え事は自然と足取りを重くさせた。でも俺はこれから家に帰らないといけない。そして世界が俺を認めてくれたかどうかを確認しないといけない。
ポケットの中で握っていた携帯が震えた。立ち止まって見た画面には『ミーナ』という見慣れない名前が映し出されていた。美奈?水奈?美菜?クラスメイトにミーナなんていうあだ名の子はいなかったはず。違うクラス?思い当たる節がない。中学の頃の友達?。いやいない。残る可能性はイタズラ電話。
取らない方がいいよな、五分もすれば諦めるだろ。それに本当に大切な用事ならかけ直してくるはずだ、その時出ればいい。そう思って俺は電話を無視して再び歩き出した。
この時の俺の判断は正しかった。そのままにしておけばよかったんだ。そうすれば、将来にちょっとばかし思い悩む平凡な高二男子としての人生を続けていくことが出来た。
俺は電話をとってしまった。名前が表示されるってことは、電話帳に登録されている誰かってことだ。つまり自分が過去に置き忘れてきた古い友達。そう考えた。
中学生ぐらいの、ほんわかした女の子の声だった。
「あっ、つながった。もすもーす」
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