星の夜

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「大丈夫だ。嫌な事思い出しちゃったか?」 その声は温かくて、じんわりと僕に沁み込んできた。 先ほどまでとは違う温かな涙がぶわりと瞳から溢れた。 それを見た巽兄さんが僕の頭を少し乱暴に巽兄さんの胸板に押し付けた。 それはまだ僕がずっと小さかった頃、パニックを起こしたように泣いてしまう僕に良く巽兄さんがしてくれていた事だった。 乱暴に後頭部を撫でかきまわされる。 高校生にもなっておかしい事は十二分にわかっていたけれど、巽兄さんの胸に顔をこすりつける。 今だけ、この瞬間だけで良いのでこうして甘えさせて欲しかった。 顔は涙でぐちゃぐちゃで大層酷い事になっていると思われたけど、そんな事は棚上げにして、こうやって近くに居る巽兄さんを感じて居たかった。 僕がすり寄ると、巽兄さんは一瞬動きを止めた。 嫌がられたと思い慌てて体を離そうとするが逆にがっしりと抱きしめられた。 抱きしめられた腕の力強さだとか、巽兄さんの体温だとかそういったもので脳内はパンク寸前だった。
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