星の夜

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それまで優しい表情が何なのかすら良く分かっていなかった僕にとってそれはとてもとても幸せな事だった。 だけど、こんな僕の全てを受け入れて愛おしいと思ってくれた人は多分今まで居なかったのかも知れない。 恥ずかしいのと居たたまれないのでどうしたらいいのか分からない。 ただ、僕は真っ赤になって視線を泳がせる事しかできなかった。 「ただいまー。」 と透き通るような女性の声が聞こえた。 母さんだ。 レストランの建物と自宅は渡り廊下でつながっており玄関から回り込まなくてもリビングスペースに入る事が出来る。 だからこうやってリビングダイニングに入ってくるまで気が付かなかった。 驚きの混じった表情で抱きしめ合う僕と巽兄さんを見る母さん。 だが、直ぐに眉間にしわを寄せ、不快感を露わにした表情になった。 「兄弟仲が良いって感じじゃないわね。」 どうしよう。どうすればいいのか。 巽兄さんを巻き込んでしまった。 小刻みに震える僕を少し強めに抱きしめ直して巽兄さんは口を開いた。 「父さんと母さんに話しがある。」 「約束したはずよね?」 「それも含めてきちんと話すよ。」 何時に無く真剣な顔で巽兄さんに、申し訳ない気持ちが膨れ上がった。 「……ぼ、僕がいけないんだ!!」 割って入る様に言ったため、二人の視線が僕に集中した。     
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