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許されたという事だろうか。
「父さん、母さん……。」
僕が涙をにじませながら声を出すと、母さんが
「巽に幸せにしてもらいなさい。」
しっかりとそう言った。
「さて、夕食にするか。」
気分を変える様に父さんは言った。
「空は、顔を洗って来てね。」
母さんは、涙の痕がついていると言って笑った。
その笑顔には嫌悪感も何も無く本当に許されたのだという事が分かる。
僕は、ふわふわとした足取りで洗面所へと向かった。
顔を冷たい水でパシャパシャと洗うとそっとタオルを差し出された。
振り返ると巽兄さんが照れくさそうに笑っていた。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
巽兄さんから受け取ったタオルで顔を拭くと、リビングに戻る前にと巽兄さんが言った。
「空、俺の事を愛してくれてありがとう。
それから、俺に空の事を愛させてくれてありがとう。」
その瞬間分かったのだ。
きっと巽兄さんは僕の事を好きになった時からずっとずっと今まで慈しんでくれていた事が。
「これからも、僕は巽兄さんの事好きで良いですか?
巽兄さんは僕の事を好きで居てくれますか?」
僕が巽兄さんに訊ねると巽兄さんは
「勿論。」
と答えた。
了
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