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怒られると思い、ビクリとする僕に、あの人は僕の横にしゃがみこむと
「別に、怒ろうって訳じゃねーから。ツリー綺麗だったか?」
優しく話しかけられた。
こんな風に優しく話しかけられた事なんか無くてそれがとてもむず痒くてどうしたらいいのか分からなかった。
何も話さない僕に、ママの様にイラつく事も無く、パパの様に怒鳴りつける事も無く、その人はゆっくりと待っていてくれた。
だからだったのだろうか、僕は起き上ると、おずおずと僕は口を開いた。
「星が……。」
「星?」
そっとあの宝物を指さした。
「ああ、あれか。」
てっぺんにきらめく星を二人で見上げる。
「欲しかったのか?」
コクリと頷くと、溜息。
ああ、やっぱり怒られるのかとおどおどしていると「ちげーよ。」と笑われた。
「取ってやろうか?」
ポンと手を僕の頭にのせながらあの人は言った。
「あの星取って。」
僕にとっての、きっと最初で最後の彼へのお願いは「勿論。」という彼の返事で実現された。
手のひらに乗せられた、キラキラはとても、とても綺麗で特別だった。
「でも、これ貰っちゃっていいの?」
急に不安になってあの人に聞くと「いーの、いーの。」とくしゃりと笑われた。
「それより、ちょっと寄ってけよ。」
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