星の世界

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だが、その子どもの瞳が俺の視線と重なった時、ドクリと血液が泡立つような錯覚を覚えた。 とにかく、何故こんな時間にこんなに小さな子どもがいるのか、事情を聞こうと殊更優しく声をかけた。 「星が……。」 ポツリと子どもは言った。 子どもの指さす先にはクリスタルで出来た星が一つ。 少なくとも今はただこのツリーが綺麗だと見ていただけの様でほっと息を吐きだした。 それが溜息の様に聞こえてしまったのだろう、見ているこっちが申し訳無くなる位に怯える子どもに「ちげーよ。」と返す。 「取ってやろうか?」 その時にはもう、多分その子どもは俺にとって特別になっていたのであろう。 パサパサときしむ髪の毛を撫でながら声をかけた。 子どもは視線を不安げに左右に揺らす。 だが、その後頼り無い、蚊の鳴くような声であったが 「あの星取って。」 と呟いたのだ。 背を伸ばし星を掴む。 そっと手渡すと、子どもはそれが世界一の宝物の様に恭しく自分の手で包み込んでいた。 クリスマスツリーのディスプレイ用のイミテーションをただひたすら喜ぶその子どもの様子に胸がギュッと掴まれた様になった。 中に入る様に誘うとオドオドとした様子で子どもは俺の後についてきた。 これ以上不安にさせないためにも、平静を装う。     
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