星の世界

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だが、母がその子どもを見た瞬間息を飲むのを見て、ああやっぱりこの子どもは普通では無いのだと思い知った。 テレビ等で知識としてはある“虐待”の言葉が脳裏をかすめた。 それは今まであまりにも自分の世界と関係ない出来事だった。 そりゃあ、親と喧嘩をする事もあるし、ムカつく事もあるけれど、あんなまともに服も与えられていない、飯もろくすっぽ食わせてもらえて無いというのがありありと分かる、そんな生活をした事は無い。 母に子どもを一旦任せ着替えに自分の部屋に戻るが、あの子どもの境遇を考えると胸が締め付けられる様だった。 今までに彼の様な子どもと接する機会等無かったが、これだけは分かる。 とにかく俺はあの子どもにとって縋れる人間にならねばならないという事だ。 それが今の俺自身の唯一絶対の願いであり、信念であった。 このわずかな時間に何が俺を変えてしまったのかなんて論じても仕方が無い。 藁をも掴むと言うが、きっと藁では役にはたたない。 どうしたらいいのか分からない不安を自分の奥深くに沈め、俺はあの子どもの元へと戻った。 父が作ってくれたオムライスを二人で食べた。 子どもはオムライスを食べるのは初めての様で感動した様子だった。 可愛いと思った。     
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