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みすぼらしく、オドオドとしているだけの子どものはずなのに、確かに俺はその子どもが可愛くて仕方が無かった。
暫くすると子どもはうとうとと寝入ってしまった。
両親に声をかけると、子どもを抱きかかえ俺の部屋のベッドに寝かせた。
リビングに行くとすでに両親はレストランから移動して、ダイニングの椅子に座っていた。
二人とも今までで一番真剣な表情をしていた。
父が切り出した。
「母さんから事情は聞いた。
うちの前に居たんだってな。」
「ああ。」
「恐らく彼、空(そら)君といったか、は虐待を受けているんだろう。」
明らかに普通で無い様子の子ども、空の今置かれている状況はきっとそれ以外無いのだろう。
俺は無言のまま頷いた。
「彼を、空を家で面倒を見る事は出来ないかな?」
俺がそう言うと父も母も驚いたようにこちらを見た。
「児童相談所に通報して保護してもらうべきだろう。」
絞りだす様に父は言った。
俺の父は情に厚いところがある。
だからこそ、無理なお願いをしているという事は理解していた。
「それでも俺は、空の事を家で引き取りたいと願っているよ。」
「巽、何故そう思うんだ。友達になってあげる事は一緒に暮らさなくても出来るだろう?」
空と友達になりたい訳ではない。
では、何故だろう。何故俺は空を手放したくないと思っているのだろう。
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