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それが俺の一番の願いだった。
父は、眉間にしわを寄せながら長い長い溜息をついた。
「空君のご両親があの子を手放すかどうか分からない。
空君がうちの子になる事を望むかどうかも分からない。」
あくまでも全てが上手くいったらという前提だがと前置きをしてから父は2つ条件を出した。
空が高校を卒業する18歳までは絶対に俺の恋愛感情を空にぶつけない事。
それから、空が俺の事を拒絶したりしても一生兄であり続ける事。
俺は静かに頷いた。
◆
翌日から父と母は、空の実の両親に会いに行く等あわただしく動いていた。
空を懇意にしている病院に連れて行き診察を受けさせた。
俺は「子どもの出る幕では無い。」と蚊帳の外だった。
空の為に自分自身が出来る事等何一つ無いのだと無力な自分が悔しかった事だけは今でもよく覚えている。
空の両親はこういった言い方をしてはいけないのかも知れないが所謂クズだった。
どこぞのご令嬢が駆け落ち同然で結婚し空を産み落としたらしいが今まで庶民の生活の経験の無いお嬢様が誰の助けも無く子どもを育て、生活をする事は難しかったらしい。
ほどなくして空の父に当たる人間との仲に亀裂が入り離婚。その男はいずこかへ行ってしまったらしい。
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