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実家に助けを求めようとするも、どこの馬の骨か分からない父親との間に出来た子どもは一族に連なる訳にはいかない。そう言われ元夫を探すが見つからず、その場限りの恋人に縋って毎日を送っていたらしい。
だから、空の母親にとってもこの話は渡りに船だった。暫くしてから父がそう言っていた事があった。
ムカつくを通り越してはらわたが煮えかえるというのはきっとこういう事を言うのだろう。
なぜ、空ばかりが犠牲にならなければいけないのか。
その後の空の母の実家や、空の父親との交渉の過程で我が家は引っ越す事になった。
父も母も「気にするな。」と言ってくれた。
だけど、あの店は父と母の夢だったのだ。
申し訳無くて頭を下げると
「父さんも母さんも巽の選択が間違っていたとは思わない。
空はもう父さんと母さんの大切な子どもだ。
親が子どもを守る事は当然のことだ。」
そう言った。
それから俺に、その申し訳ないって気持ちを空に悟られない様にしろと言い含められた。
「空にとって巽は兄として、家族として拠り所にならなければならない。
そんな人間がふらふらと悩んでいたりしたら縋りたくても縋れない。」
はっきりと父親にいわれ俺は空の為に兄であり続ける事を再度心に誓った。
◆
一緒に風呂に入って良からぬ気持ちになってしまったらこんな、小さな空に対して申し訳ない。
そう思っていたが、それは杞憂に終わった。
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