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空が18歳になるまでは告白をしないと父に誓ったが、そもそも18になったら告白出来るのかと聞かれたら、その時の俺には分からないとしか言えなかっただろう。
それくらい、空は兄として、家族として俺を慕ってくれていたし、それを手放すだけの勇気が自分自身にあるのかと言われたら無かったのかも知れない。
◆
俺が大学生になる頃には空もかなり大人びてきていた。
友達も沢山出来たみたいだ。
だけど、空は家の手伝いを優先させてあまり外に遊びに行きたがらなかった。
「無理するな。」
そう声をかけながら、空を独占出来ているというほの暗い感情に支配される事が何度もあった。
そもそも、空が家族に気を使う必要なんて全く無いのだ。俺の我儘で彼を家族にしてしまったのだから。
酒が飲める年齢になって、飲み会が増えて、出会った頃の様に一緒に風呂に入るなんて事は無くなって。
徐々に開いて行く様な気がしてしまう距離が嫌で怖くて、無理矢理にでも空を自分のものにしてしまいたい衝動にかられた。
就職活動が始まってようやく先が見えてきた。そんな時友人としこたま飲んだ。
「三好もそろそろ彼女位作れよ。」
からかう様に友人に言われいつもの様に曖昧に笑みを浮かべてはぐらかした。
お前、大学入ってから彼女居た事無いだろ?ニヤニヤと笑みを浮かべながら友人に言われる。
まあ、その通りだな。
「もしかして、お前童貞?」
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