クジラ雲

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千葉先輩や杉村達が巨大な段ボールに挑む隣で、私と瑞穂先輩は、運搬に邪魔になりそうな小物達を一足先に運び出す。 段ボールの大きさとは反比例して、どれもが見た目より軽くて助かった。 これなら奈津美の出番も必要無さそうだ。 「そう言えば、」 先を歩く瑞穂先輩が、『救命胴衣』と書かれた段ボールを手に振り向く。 「千葉くんが言ってた意味が分からなかったんだけど、岸田さんが大活躍って、あれどう言う意味なの?」 やはり、そこは気になりますよね。 「あぁー、私ら二年の一部では結構有名なんですけど───」 まだ私たちが入学して間もない頃だった。 その当時、校内の掲示物が燃やされるという、不穏な事件が立て続いて、その日も担任に頼まれて同じクラスの奈津美と掲示物の貼り替え作業に駆り出されていた。 掲示物が頻繁に燃やされていたのは、北校舎と南校舎の間にある、旧校舎入口の掲示板。 人目も少なく、備品や部活の物置として使用されているためか旧校舎を使用する人も殆どいない。 幽霊校舎という呼び名も納得できるほどの、おどろおどろしい雰囲気が、絶妙にマッチしていた。
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