クジラ雲

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「───と、まぁそんなわけで、奈津美は半端ない怪力の持ち主なんですよ。その力をコントロールするために、最近空手を始めたらしいんですけど。対戦相手、死ぬんじゃないかなって心配なんですけどね……って、あれ、瑞穂先輩?」 先を歩いていた筈の瑞穂先輩が、いつの間にか後ろにいる事に気付く。 話に夢中になり過ぎて、抜かしてしまったのか。 「どうかしました?」 ダンボールを抱えた瑞穂先輩が、考え込むように俯いていた。だけど、それは確かに違和感だった。 「ううん……ごめん。何でもないから……」 スピリチュアルな能力が目覚めていない私でも、はっきり分かるほどの、違和感だった。 「どした? 何かあった?」 「あ、千葉先輩。いや、何でもない……らしいんですけど」 何でもない、と笑顔を貼り付けて歩いて行く瑞穂先輩が。その小さくなって行く後ろ姿が。 何かに、怯えているようだった。
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