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「す、すみませんっ!!」
コンクリートに土下座した額を擦り付ける。
いっそ頭から流血すればいいのに。記憶もまるっと消えればいいのに!
「も、いいから、ほんとっ……笑い死ぬっ」
そして目の前の彼は、お腹を抱えながら息も絶え絶えに、ヒーヒー笑い転げている。
「数々のご無礼、もういっその事ここから……」
身を投げ───高イィッ!!
さっきまで何とも無かった高さが、落ちることを想像した途端、恐怖で足が震えてくる。
コンクリートの囲いにかけた足を、慌てて引っ込める。
「あはははっ、もういいから、全然怒ってないし」
肩で息を整えながら、彼がゆっくり立ち上がる。膝に手をあて、ハァーっと息を吐き出す。
風でサラサラと琥珀色の髪が靡いた。
あれ……どこかで───見たことがあるような。
「何?」
思わず凝視していた私の顔を、鈍色の瞳が覗き込む。
「い、いえ、何でもないです」
取り繕うように顔の前で振ったはずの手が、強制的に停止した。
「え……」
なぜか手首を掴まれていたのだ。
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