クジラ雲

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「ところで、キミは何しに来たの?」 細められた瞳に、すっかり本来の目的を失念していた事に気がつく。一体私は、何をしにここへ来たのだ。 散々失礼な発言をしておいて、「瑞穂先輩と何があったんですか?」とか、もはや聞ける立場じゃない。どうする。 だとしたら、あの保健室で言われた言葉の真意を聞くしか─── 「あ、まさかアレが心配で来た?」 意味深な微笑みに息を飲む。 まさか、君は心の声が読める系ですか! 「さ、さすが! 鋭いですね」 彼の眉がピクリと上がる。 「あ……じゃなくて、鋭いね」 あー、先輩へのタメ口。難関だ。 「誰にも言ったりしないから大丈夫だよ」 何かを思い出したかのように、ククッと笑いを噛み殺している。 誰にも言ったり? 言ったのは、貴方ですよ? 何だか……嫌な予感が。 「寝言ってさ、あんなにハッキリ言うもんなんだね」 まさか…… 「溶けちゃうんでしょ?」 まさか、まさかっ! 「キミの脳が」 嘘だ、夢だ、幻だ! 「雅也くんの色気でさ」 「イヤァーー!!」 私の祖先にイタコはいない。親戚に占い師もいない。どこかの血筋から受け継がれた、特殊な能力も未だ開花していない。 だけど、何がなんでも。 何がなんでも絶対に、開花してみせる! 「あ、名前教えてよ」 「ヤダ」 「寝言」 「魚住莉子でございます」 「よくできました」 必ず君の記憶を抹消してやる!
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