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怖くて怖くて仕方無かった。
───死ぬつもりなんじゃないかって
ずっと千葉先輩の言葉が、呪いみたいに私の頭の中を侵食していく。何か比喩めいたものじゃない。きっと、そのままの意味。そのまま言葉通り、彼は……
ぞっとして、払いのけるように首を振る。
あの笑顔も、交わした言葉も、本当は全部が見せかけで、真実は違うのかもしれない。
それならいっそ、全部知らない事にして、最初から無かった事にして、またいつも通り奈津美と馬鹿みたいに喋って。前みたいに千葉先輩の眩しさに憧れて。ただ純粋に、バーに挑むだけのあの日々に戻れたら……そう、思ってるはずなのに。
なのに。
こんなに、遣る瀬無い気持ちになるのは。
無力感で押し潰されそうなのは、
きっとあなたを、失いたくないからだよ。
「クジラさん」
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