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「先生はどうしていつも自分にそんな調合をするの?セージに、タイムに、レモングラス?」
少年が薄茶色の前髪を耳にかけて、その大きな目で男を見つめる。あの後、あの調合で過去に囚われなくなった少年は、あの日までのことをすっかり忘れてしまっているようだった。覚えていたとしても関係ないと感じるようになっているはずだった。男はそういう調合をした。そして彼は別人のように明るくなり、未来について考え、毎日を前向きに生きるようになった。そしてある日、調合師になりたいのだと言って、ノックもせずに藤色のドアから飛び込んできたのだった。それ以来、少年は自分のことを先生と呼ぶようになった。少年は男を先生と呼んではいたが、むしろ兄と弟の関係に近かった。それでも自分が誰かに先生と呼ばれるのは奇妙な感じがした。そう呼ばれるのを受け入れられるようになるには、経験も歳も足りないと感じていた。しかし皮肉にも、あの日、誓いを破った日。調合師の証である模様は、今までにない程に長く大きく広がった。それは同世代の調合師とは比較にならない程に立派なものだった。
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