§1:好きな人がいます

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§1:好きな人がいます

好きな人がいる。 その人は、同じクラスの男子で、背が高くて、かっこよくて、スポーツ刈りの、つんつん頭で、鼻がすっと高いくせに色が白くて、ちょっぴり筋肉質。 みんなからモテる、と、思う。 名前は、川本大希。   きっかけは、たまたま理科の実験で向かいの班になったこと。 さらさらとスプーンから流れ落ちる薬品のその落ちていく白い粉末を見ているうちに、ぐるぐると回すガラス棒のその手つきから、目が離せなくなった。 溶けていく薬品の粉と一緒に、私も溶かされていったんだと思う。 話したことはない。 ただ、気づけばずっと視線であの人を追いかけていて、時々目があったりなんかして、そんな時はやけにイライラして、どうして自分が、こんな風になってんだろうって、それで、『あぁ、私はこの人が好きなんだ』って気づいた。 朝、教室に入るとそれとなくあの人の席をチェックする。 ほぼ毎朝、私の方が早く着く。 自分の席に座って、教科書とかを片付けるふりをしながら、登校してくるのを待つ。 あの人はいつも、誰に向かって言っているのか、分からないような小さな声で クラス全体に向けて、こっそり挨拶しているのを知ってる。 今日もまた、入ってくるなり小声で言った。 「おはよー」 にぎやかな教室、そのまま友達男子のところに合流するあの人に、私は心の中で、返事を返す。 「おはよー」って。 だって、誰も返事してあげなかったら、かわいそうでしょ? だから、私だけが、返事をしてあげるんだ。 それから、同じクラスで、親友の紗里奈と話す。 ドラマの話しとか、イケメン俳優の話しとか、いろいろ。
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