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それからの一ヶ月は目まぐるしかった。会社の移転や引越し、新たな社員の教育など彩花も俺もほとんど会話することすらできない忙しさだった。
それでも芽呂の家庭教師はほとんど休むことなく続けられた。
そして12月になったある日の日曜日、俺は彩花にドライブに誘われた。会社の準備に追われててほとんど日曜日すらも休まなかったためたまには二人でゆっくりするのもいい、そう思い俺も少しだけお洒落して久しぶりの夫婦のデートを楽しむ。
午前中は近くの映画館で恋愛映画を観て、それからモールの喫茶店でお茶をする。それから彩花の運転で、あの冬の日の『思い出の海』に出かけた。
あの日以来の海。
ーー懐かしいね…クミとの原点だもんね、ここ。
ーーああ…俺たち3人のね。
ーーいつか芽呂と3人で来たいよね。
今日もあの日と同じように少しだけ風が強い冬の晴れた海が二人の未来を歓迎してくれていた。そう思っていた。
俺も、そして彩花もそう思っていた。
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