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海に着いた頃は、ちょうど昼を少し過ぎていて海岸道路沿いのあのレストランはまだあの日のまま同じところで二人を迎えてくれる。
そしてあの日と同じメニュー。
ーーわたしは海老と蟹のクリームパスタ。それと食後にホットのカフェモカを。
ーー俺は…ベーコンと醤油のパスタで、それとコーヒー。
ーーえっ!?クミはペペロンチーノじゃなかった?
ーーそうやったっけ?
ーーそうやった!注文した後、慌ててたじゃんクミ。
ーーじゃ、ペペロンチーノで。
ーーコーヒーは食後でよろしいですか?
ーーはい。それで。
それから食後もくだらないテレビの話や、さっき観た映画の話をしながら、あの日と同じテーブルから同じ海を眺めていた。
「クミ…」
「ん?」
「幸せ?」
「うん。彩花は?」
「幸せ」
「クミとこうやってまたここに来れて。芽呂もあんなにうち達に懐いてくれてるし」
「幸せすぎかも。怖くなるくらい」
「あの…芽呂がお父さんに隠されてわたしたちの前からいなくなった時のこととか思い出すこともあるけど…あの頃からしたら怖いくらい幸せだよね」
「だな」
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