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その日の夕方、俺は気が気でなく彩花の帰りを二階のベランダでタバコをふかしながら待っていた。風は冷たく頬を突き刺す。それでも胸の中はやっぱり温かく彩花を待ち焦がれていた。
ーー連絡くらいすりゃあいいのに…彩花のやつ。
寒空の中でコーヒーは冷めてしまい、タバコの本数も5本を超えコーヒーを淹れに部屋に戻ろうとしていた時、後ろのガラスの引き戸がーーガラガラーーと開く。
そこにいたのは彩花ではなく芽呂だった。
「お兄ちゃん、彩花姉ちゃんは?おらんと?」
「まだ帰ってきてないよ」
「どっか行ったと?」
「病院」
「えっ!どっか悪いと?」
「ん…」
「何ね!どうかしたと!?ねえ!お兄ちゃん!どがんかしたと!彩花ねえちゃん」
俺が返事に困っていると…
「うちがどうかしたと!?」と後ろからベランダに顔を出したのは彩花だった。
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