6. 父の死と拓海との別れ

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8f2b6a4a-680d-439a-b1e5-737171dcc8bb 当然わたしのことになど 興味のない夫は 「わかった」 と一言だけの返事しか返してこない。 ただの業務連絡だから それ以上のことは期待していない。 飛行機の中で二ヶ月前の日のことを 思い出していた。 あの日たまたま仕事が早く終わり お母さんと二人一緒に 夕食をつくって食べた。 夕食の後片付けをわたしが終わると お母さんがわたしを部屋に呼ぶ。 エプロンを外し食卓の椅子にかけると 重い空気がわたしの周りを支配した。 何となくではあっても 薄々内容は分かっているつもりだった。 母親の話というのは多分父の病気のこと。 父の癌のこと。 ところが部屋に入ると わたしの想像をはるかに超えた 現実が待ち構えていた。
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