17. メロディービレッジの危機。

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「だって…うちの…たった一人のママじゃん」そう言う芽呂を少し離れた壁際の椅子から優しい目で見る小夜子さんと拓也さん。 少し意識が戻り彩花が俺を見て「赤ちゃんは?」と聞いてきた。俺は言葉が見つからずに…ベッドのわきに言葉を選ぶように腰を下ろし彩花の右手を俺の両手で包む。 俺の言葉を待つ表情が(ゆが)んでいく。そう見えたのは俺の涙のせいではなかった。 「赤ちゃん…」 「ダメだったの…?」(かす)れた彩花の声に芽呂が「うち…もう赤ちゃんじゃなかけど…ママの娘やけん…」と胸元から見上げるように彩花を見た。 「うん…うん…」それだけをようやく口にする彩花。そして…状況を察しそれだけを繰り返し芽呂の頭を撫でる彩花。 ーーーー病室の中は安堵(あんど)と悲しみの両方の感情に支配されていた。
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