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今度は噛み付かれても怯まんぞ、と近付くと、それ以上近付くなとばかりに唸られる。間違いなくこちらに危害を加えるであろう敵意に苦笑しながら、更に近付いて。
「ガァウ!」
「ぐっ」
殺意バリバリの噛み付きが、首筋に襲い掛かる。
直ぐ様用意していた鍵を首輪に挿し込み外し、彼女が食らい付いている間に、しゃがみこんで足枷も外しにかかる。律儀に噛み付いたままついてくる彼女の牙は、徐々に危険な域に食い込んできた。
「最後にっ――」
長引かせると冗談抜きで自分が死ぬ。
その一心で彼女の背中に腕を回す。無理やり腕を掴んで、手探りで手錠の鍵を挿し込み、こちらも外す。
いきなり自分の両腕が自由になったことに驚いたのか、噛みつく力が緩むのを感じた、瞬間に頭を掴んで引き剥がした。血が吹き出すことはない。どうやら致命的なものには至らなかった様子。
「飯持ってくるから大人しくなっ」
そして即座にエスケープ。去り際に見た彼女の顔は、呆気に取られているようだった。
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