解散してしまった

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売れないバンドは腐るほどいるし、売れない理由も様々で、それこそ学園祭のために作ったような素人丸出しバンドから、地道にライブ活動はしてるがメジャーデビューまでは程遠い、技術があるが華がないようなバンド、特定のジャンルにこだわり過ぎてて、熱狂的なファンはいるが、ただそれだけみたいなバンドもある。 俺たちは地道な活動とファンの熱心な応援の甲斐もあって、とあるレコード会社からメジャーデビューしたんだ。 しかしよくあることなんだけど、シングルもアルバムも売れなかった。スマッシュヒットすらなく、なぜ俺たちはCDデビューできたのか、それすらわからなくなる始末だった。 すると当然の結果として内紛が起こる。売れないのはヴォーカルのせいだとか、曲を作ってるギターのせいだとか、マネジメントしてるレコード会社のプロモーションが悪いとか、それこそ衣装がダサいとか、付き合ってる女が悪いとか、もう音楽とは関係ない次元の話になって、顔も見たくないということになり、売れないまま解散ってことになった。 ここまではほんとよくある話で、結局は才能がないという一言で片付く。それでも一応メジャーデビューという形で音楽業界で食べていけるかもと、希望を持ってしまった以上、なんとか音楽で身を立てたいと思うのは、自然な欲求だったはずだ。 だから俺はベーシストだったが作詞担当だったので、メジャーで活動していた時に知り合った音楽関係者に仕事ないですかと、声をかけたり、メールしたり頭を下げてまわった。 いくつも頭を下げてまわったかいがあって、深夜のテレビでやってるあんまりいけてないアイドルの歌が急にいるという話で、コントの中で使う歌を今日中に作れないかと、一度ゲストで出た深夜の音楽番組のプロデューサーの同業者から連絡があった。
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