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「この3つのうちのどれかにしたらどうだい?」
程なくしておじさんは戻ってきて3つのボトルをカウンターに並べた。赤っぽい紫の酒瓶に恐らく同じ色の液体が入っている感じがする。パッと見はワインみたいだ。
「これは…葡萄酒ですか?」
「よく分かったね。左から媚薬、悪魔の囁き、エマ」
葡萄酒か、どれも美味しそうだな。値段のプレートを見る感じ比較的値段も安い。
「味はどんな感じなんですか?」
「媚薬は香りは強いが飲みやすい甘さでいくらでも飲める。悪魔の囁きは酸味とえぐみが強いから好き嫌いが別れるな。エマってやつは1番スタンダードな味で人気だな、まさに葡萄酒って感じだ」
個性が強めのやつを選んでくれたんだろうか。今の気分は甘めのやつがいいから、媚薬って名前のやつにしようかな。
「じゃあ一番左のやつで願いします」
「いいね、誰かと飲むのかい?」
「いや、残念ながら今は一人なんです」
「そうかい、もし口に合えばまた恋人が出来た時に次もこいつを選んでやってくれ」
なんで聞かれたんだろう、この世界だと家で飲む時は誰かと飲むのが普通なのかな。ちょっと不思議な質問をされた気がする。
「もしかして、本当に媚薬だったりするんですか?」
「はは!違うよ。これを恋人と飲む時は夜のお誘いって意味になるんだ。葡萄酒だからね」
「え、葡萄酒を人と飲むのって意味があるんですか?」
「あぁあるぜ、悪魔の囁きは女性なら今夜は酷くしてって意味で、男性なら激しく抱くぞって意味になる。エマは同性なら友好、異性ならあなたに気がありますって意味になるんだ」
「素敵ですね」
「そうだろう?だからどの家でも成人すると葡萄酒の意味を覚えさせられる。おにいさんはもしかして最近ここに来たのかな」
「そうなんです、あはは」
葡萄酒の一つ一つに意味があるなんて面白いな。他にも色々あるみたいだし、覚えてみたいかも。
「ありがとうございました」
「毎度あり、また来てくれよ」
店主さんに笑顔で送られながら俺は店から出た。
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