1361人が本棚に入れています
本棚に追加
/1294ページ
きっとプライドを持って仕事をしている女性に違いない。
そんな女性の目を欺くことはできないと、ウォレスは思った。
ウォレスは肩を竦めると、彼女の瞳を避け、うっすらと雪が降り積もった地面を見つめた。
「・・・本当は、どういう風に彼と顔を合わせていいのか、わからないのです。私と会うことで、あの酷い晩のことを思い出してしまうかもしれない・・・。そうであるのなら、それはかわいそうだ・・・」
所々詰まりながら話すウォレスは、まさに彼らしくなかった。下手な言い訳をするティーンネイジャーのようである。
居心地が悪そうに宙をふらふらと泳ぐ手を、レイチェルの白い手が捉えた。ウォレスが顔を上げる。
「少し散歩しませんか? 寒いけど、雪化粧の中の散歩も乙なものでしょ?」
二人で白い息を吐きながらしばらく歩くと、運河のほとりに出た。
水の温度の方が外気より高いようで、川面からうっすらと湯気が上がっている。
「あそこに座りましょう」
レイチェルが、ベンチを指差した。
ウォレスはベンチの上の雪をはらうと、自分のコートを脱いでベンチにかける。振り返ると、レイチェルのいたずらっ子のような笑みがあった。
「なるほど・・・。マックスの言ってることは正しいって訳ね」
「?」
最初のコメントを投稿しよう!