act.24

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「突然同性に、『好きです』って言われたあなたの困惑も判るわ。私だって、同僚の事務の女の子に好きだって言われたら困っちゃう。他の人のことならともかく、いざ自分がその立場になった時、誰もがすぐに受け入れることができる問題じゃないもの。私だって、初めてあの子の気持ちを知った時、困ったわ。さて、どうしようと思った。あの子はあんなルックスのくせして奥手だから、いつもだったら『口説き落とせ!』ってハッパをかけるけど、今回は正直、何と言っていいかわからなかった。一応は励ましたけど、それも私の本心なのかどうなのか、今もわからない。・・・だから、正直言ってほっとしているの。昨日、あの子があなたのことを『きっぱりと諦める』と言った時」  レイチェルは、ちらりとウォレスを見た。  ウォレスは無表情で、じっと川面の景色を見つめている。 「同性同士の恋愛っていうリスクもそうだけど、私に言わせれば、あなたには危険な謎が多過ぎる」  ウォレスが、レイチェルを見た。  二人の目つきが、一気に厳しさを増した。 「私は、C・トリビューンの報道カメラマンをしています。改めてよろしく」  レイチェルがそう言って、再度右手を差し出す。  ウォレスは少しだけその白い手を見つめて笑みを浮かべると、その手を握り返した。 「酷い話だけれど、あなたにマックスを引き合わせたのは私なの。あなたの会社の圧力で、あなたの記事を揉み消されて、あなたに興味を持った。あなたがどういう人間か知りたかったの。すごく」 「・・・ではローズ君は、君の送り込んだスパイということかな?」  レイチェルが声を出して笑う。 「だといいんだけど。マックスにその役目は無理よ。あなただって、あの子を見ていたら、それが無理だってことはわかるでしょ?」  ウォレスも口元に手をやって笑う。 「・・・確かに」  一頻り二人で笑って、レイチェルは肩を落とした。     
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