act.02

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 世界的にも著名な建築家レオナルド・マーシャルの代表作ともなっているミラーズ本社の建物は、様々な業界からも注目をされており、本社建物内でミニギャラリーやパーティー、有名スポーツ選手や芸能人のチャリティーオークションが開催されることも多々あった。  しかし社長のベルナルド・ミラーズは、急成長を遂げるパワフルな会社のイメージとは裏腹に、非常に大らかな人物であった。  会社で仕事をするよりは、海にぽっかり浮かぶ小さな島の別荘で、釣り三昧の日々を過ごしたいと常に思っている老人だ。  だから他社の人間は、ベルナルド・ミラーズの人となりを知ると、どうしてミラーズ社にはあんなにも優秀な人間が集まってくるのだろうと首を傾げるのだった。  実際に会社の経営を行っている副社長のビル・スミスを始め、斬新な製品の研究企画開発者のウィリアム・ウィンストとエマ・ジャクソン、広報のエキスパートであるキャサリン・グッテンバーグ、強力な営業戦略を立てるロッド・オースティン、そして堅実な企画管理を行うエドワード・バーンズなど、毎月発刊される経済誌やその他の専門誌に頻繁に顔が登場するような、他社が喉から手が出るほど欲しがる人材がたくさん社内に溢れているのだ。  だが、外部にはほとんど知られていない事実だが、ミラーズが最も信頼を置いている人間は、上記に上げた人物の中にはいない。     
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