1361人が本棚に入れています
本棚に追加
/1294ページ
「神様・・・。どうか、お救いください。私は犯してはならない罪を犯しました。私のたった一つの過ちで、ミルズ親子の幸せを永久に葬り去ってしまいました。ああ、神様。私は医者でありながら、立派な人殺しです。あの少女の輝ける未来を、私のこの手が奪い去りました・・・」
男の手が、マックスの汗で汚れた黄金色の髪に触れる。
マックスは、柔らかく髪を撫でられ、やがて安心したように寝息を立て始めた。
泣き疲れた顔をして、「くしゃん」と鼻を鳴らす。
次の瞬間、温かな感触がマックスを被い包んだ。
その後、男がマックスの頭を支えながら、そっと立ち上がったのが、頬に当たる空気の動きでぼんやりとわかった。
「ヘイ。コートは持って帰った方がいい。また吐かれたら大変だぞ」
「コートはどうなってもいいさ。ローレンス、よかったらこの坊やを目が覚めるまでここに置いてくれるか」
「ああ、それはいいが・・・」
「こんな天使のようなお面相の男を、この状態のまま物騒な道端に放り出す訳にはいかないだろう。ろくでもない奴らにレイプされたり、場合によっては殺されるとも限らん。 ── この坊やは、この町の道端にねっ転がるには少々汚れなさ過ぎる。この街の住人は、天使を見るやいなや、片っ端から焼き討ちにかけるような連中ばかりだからな」
男の言い草に、バーテンの笑う声が遠くにこだまする・・・。
最初のコメントを投稿しよう!