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ウォレスの言葉は、まるで魔法である。
どんなに厳しい状況でも、また不可能だとわかっていることでも、ウォレスが「何とかする」と言えば、なんとかなるような気がする。絶対的な説得力がウォレスの言葉にはあった。
マーサーが、深々と頭を下げて部屋を出て行く。
それと同時に、ウォレスは電話の受話器を取った。
プッシュフォンを押すウォレスの顔つきは、先ほどの穏やかなそれとは違い、獲物を見つけた瞬間の鷹のような目つきだった。
電話の相手は、2コールの後、受話器を取った。
「ウォレスだ。さっき言っていた件、やはり進めてほしい」
『手配は粗方ついてるよ』と相手が答えてくる。ウォレスは満足げに頷いた。
「それならいい。だが、少々急いでほしい。30分後にまた電話する。その時までに全てを完了させていてほしい」
ウォレスのこの言葉に、相手は度肝を抜かれたらしい。『うへぇ』と声を上げる。
『いやにすっ飛ばしてるな。どう頑張ってみても一週間はかかる仕事だ』
「じゃあ新記録を作ってもらおう。金に糸目はつけない」
『はいはい。わかりました。他ならぬアレクシスの頼みだ』
相手のこの言葉に、ウォレスは露骨に顔を顰める。
「その名前で呼ぶのはやめてくれ。じゃあな、頼んだぞ」
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