act.02

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「いや、今その真っ最中なんです。バーンズ部長が、トラスト社社長のマイルス氏と激しくやりあってるところです」 「どうやら問題は性急なことらしいな」 「 ── はい、そうなんです。ポリテノックの開発がほぼ7割方進んだ今の段階になって、突然ストラス社が開発から手を引きたいと言い出したんです。契約を破棄したいと。こちらとしては、もう何がなんだか・・・。賠償金は払うと言ってるんですが、ポリテノックの開発は、我が社の研究スタッフとストラス社の研究スタッフとの合同チームで行われていました。うちが持っているデータ以上に、ストラス社所有のデータも価値が大きいのです。しかも未だ解決のついていない問題もある。開発部のウィンスト部長の見解では、今あるストラス社のデータをうちで引き継いだにしても、完成まではとても無理だとのことです。他社にも、ストラス社ほどのレベルの開発を手がけられるところはありませんし、他社の動向をみても、代わりの開発会社を探している時間はないんです」 「ストラス社の動向を把握できていなかったのは、バーンズのミスだな」  今まで穏やかだったウォレスの瞳が鋭い光を灯したのを、マーサーは見逃さなかった。マーサーは、手のひらにじっとりと汗が浮かぶのを感じながらも、こう答えた。     
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