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「遠目で見たらおまえだってわからないんじゃないか」
「キミも白いオウムで目立ってるだろ? だからすぐに街でうわさになった。オレはキミほどではないけど、それでもすぐに顔を覚えられてしまう。大型の犬種はさほど好まれないからそう多くはないんだ」
「そんなもんか?」
「ああ、少なくともこの辺でオレと同じ犬種を見かけたことがない」
「生後一年のおまえさんがこの街のあるじみたいなこといって」
「ペットショップでかごの中の鳥だったキミにくらべれば知ってるさ。オレは外を出歩いている。顔なじみの犬だって多い。だいたい人間の都合によって散歩の時間ってのは決まってるもんなんだ。だけどバァさんはすごくひまだから、決まった時間だけでなくいつでもオレを散歩に連れて行く。だからこの辺に飼われている犬のことはだいたい知ってるんだ。小型の室内犬なら近所でも知らない可能性はあるけど、オレみたいな大型犬を飼う飼い主なら絶対散歩に連れて行く。アフガンハウンドはオレ以外にいないよ。息子がオレの顔をしっかりと記憶してなくてもオレだって絶対にバレる。いやオレだって断定できる確証がなくても、バァさんがうたがわれるのはかわいそうだ」
やっぱり飼い犬は飼い主を慕うんだな。
役に立ちそうにもないバァさんなのに。
おじょうちゃんもアフガンがいうように、バァさんのことをかわいそうだと思っているらしいし。
なんでこぞってこのバァさんを守ろうとするんだ?
オレにはどうもげせなかった。
オレはどうしてもこの仕事がしたくてならない。
なぜなのかわかんないけど、やりとげたかったのに。
アフガンが乗り気ではないなら仕方ない。
「わかったよ。どうせ大金を得たところでオレたちには使えないんだしな」
「金はどうでもいいが、息子にはひと泡吹かせてやりたかったよ。でも、別のことを考えよう」
「オレの小さな頭ではそれ以上は無理だ。他に楽しいことを探すとするよ」
「コウノトリの家にでも行くか?」
「閑古鳥が鳴いている事務所か。暇そうだが暇つぶしにちょっと行ってみるのも悪くない」
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