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アフガンは貸しを返すつもりなのか、コウノトリの居場所を教えてくれた。
「ヤツはおじょうちゃんの家のななめ前に住んでる。ぼろぼろの二階建てのアパートだ」
「行ったことがあるのか?」
「ああ。いるだけでノミとかダニがくっつくんじゃないかってほどきたない部屋だったな。おじょうちゃんがあんな部屋に好きこのんで行くとは、よっぽど家でいやなことがあったんだろうと思うよ」
そういえば、おじょうちゃんはすねるとコウノトリの家に立てこもるといってたな。
それでもまた家に戻っているようだから、本気で家からにげ出したいとは思ってないのだろう。
それこそ、おじょうちゃんのお父さんやお母さんがコウノトリに頼んで捜索しなければならない事態ではないようだ。
気づけば一行はとある一軒家の前に立ち止まっていた。
古めかしい平屋で、両隣の立派な二階建て家屋の間にひっそりと取り残されたようにたたずんでいた。
「じゃあ、気をつけて帰るんだよ」
バァさんはアフガンの綱を受け取ると、おじょうちゃんにいった。
「うん。じゃあ、またくるね」
おじょうちゃんは家の前に止めてあった自転車にまたがった。
どうやらここがバァさんの自宅のようだ。
バァさんと調和したような木造家屋は、バァさんの生い立ちまでをも語り出しそうなほどの風格があった。
「家に着いたらメールするんだよ」
「うん! ばいばい」
おじょうちゃんは大きく手を振ると、自転車に乗ってこぎ出した。
バァさんも手を振って、自転車で走っていくおじょうちゃんをいつまでも見送った。
アフガンはオレを振り返ることもなくいった。
「おじょうちゃんについて行かないのか?」
アフガンはバァさんと並んでおじょうちゃんを見守っている。
何度見ても似合わない取り合わせだ。
「じゃあ行くよ」
「もし、家に着くまでにおじょうちゃんになんかあったときはすぐに来てくれ」
「わかった」
オレは羽を広げると、ゆっくりとしずんでいく太陽を背に、軽やかに自転車をこぐおじょうちゃんを追った。
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