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おじょうちゃんの家は小高い丘のてっぺんにあった。
その丘の斜面にも家が建ち並んでいて、どれも新しい。
家主の思い入れのつまった庭を持ち、それぞれの時間が流れているような、静かで街並みの美しいところだった。
すっかりあたりもうす暗くなってしまったが、アフガンのいっていたコウノトリが住んでいるボロアパートはすぐにわかった。
なんだってここだけ古いのか。
外壁につけられた電灯もちらちらとしていて、今にも消えそうだ。
アパートを一周ぐるっと飛んでみる。
部屋数は六。
二階の一番左の部屋以外は雨戸がしまっていて、人の気配がない。
この暑さとあっては、エアコンもつけずにしめきってることはあるまい。
開いている窓をのぞいてみたら、ひとりの男が明かりもつけず、四角いテレビのようなものの前にあぐらをかいてすわっていた。
しわくちゃの短パンに、袖を肩までまくり上げたTシャツ姿。
テーブルの上に置いてあるネズミのようにしっぽが生えた丸い物体をにぎりしめながら、うつらうつらと居眠りしている。
オレはその部屋のベランダに降り立った。
人間よりはるかに軽いオレがのっただけでもぎしっと音を立てる。
上を見れば、洗たく物を干すためのロープが張ってあって、無造作にパンツとタオルがかけてあった。
この男がコウノトリだろうか。
これだけ部屋の中があれているのだから、天井にツバメが巣を作っても、オレがこのベランダを羽休めに使っても、たいして気にとめることもなかろう。
オレはここで休息をとることにした。
室内で飼われていたオレには、ちょっとばかりハードな運動だった。
目をつむると、ここ数日で見た景色がモザイクのようにちりばめられて、ぐるぐると目が回るようなつかれを感じた。
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