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「冷えますね……」
「研究室は日当たりが悪いからね。必要なこととはいえ冬が辛いのは理解できるよ」
気象情報によれば、十年に一度の寒波が日本を覆っているらしい。
「……とはいえ、手がかじかんで作業に支障をきたすのは好ましくないね?少し、休憩をいれようか」
彼の言葉にほっとする。
「さて。では、手を出したまえ」
「手、ですか?」
疑問符を浮かべながらも言われるままに手を差し出す。
「ああ、思ったより冷たいね……ここが会社でなければお互いの体温で温めあうというのが相場なんだが、」
優しく手首に触れる唇。
「今はこれで我慢してくれたまえ」
体温が一気に上昇するのが分かる。
「それでは、コーヒーを淹れてもらえるかな?」
──そう言って彼は、悪戯っぽく笑ったのだった。
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