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「今夜、星、見に行こうぜ。流星群」
寒風の吹く中の夕方、家に帰ると数軒隣に住んでいる、幼馴染の哲(てつ)がやってきていた。そこでそういうふうに誘われたのである。
誘いはともかく、哲ときたら緑葉の家のリビングのこたつに堂々と入って、おまけに蜜柑なんて食べながら「よぉ、遅かったな」なんて言うものだからちょっと呆れた。
いや、今更ではあるのだけど。
哲とは幼稚園の頃からの付き合いだ。母親が元々友達同士であることも手伝って、幼稚園の頃からよく遊んだし小学生になってからも同じだった。学校が離れたのは高校生からだ。
中学三年の秋、緑葉は今の女子校へ進学することを決めた。そこにある幼児教育科に入りたかったのだ。
子供が好きだと薄々思っていたところへ、中学三年生の夏に幼稚園を訪ねる簡単な実習があった。そこで「子供と接する仕事をするのもいいなぁ」と思ったのがきっかけ。
勿論、まだ中学生だった頃だ。強く『保育士になりたい』『学校の先生になりたい』だのそういう具体的な職業が頭にあったわけではない。
けれどそういう知識はあって困ることは無いだろうし、将来の選択肢も増えると思った。なので進路を決めるときその学校へ行きたいと両親に相談したし、両親も簡単にOKを出してくれた。
受験もあっさり受かった。高校にもあっさり馴染んだ。つまり、学業や学校生活については平和そのものであったのである。
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