白の追憶

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抱えたままの痛みは、決して消えない。 消えないけれど、消えないことを知る同じ心を見つけたとき、痛みは痛みのままではいない。 痛みが、和らぐような感覚。久しく、忘れかけていた感覚。言葉を交わし、言葉を交わさず、交流と沈黙を行き交うなかで、僕らは理解しきることはないということを、理解してきた。 それは、諦めではない。理解という言葉を超えたところにある、真の理解であり、魂同士の対話だ。 心からの安心感が、それを物語っている。 「ねえ、ちょっとそっちを向いててよ」 「ラエドったら、またいつもの思いつき?」 「まあ、そうとも言うかもね。とりあえずそっちを向いてて」 「しょうがないわね、分かったわ」 少しすねた様子で向こうを向く。
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