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「嫌……というか……」
“ あと、入ったところで服の内側が見えるとかもないし”
「そんなことは聞いてませんけれども!」
「まあまあ、シェリー様」
姿は見えなくとも、口を開けば軽口の嵐である。年甲斐もなく憤慨してしまったシェリーを、アドルフが苦笑しながら慰めた。
「私は妙案だと思いますよ」
「アドルフ様!」
「見方を変えれば、シェリー様は今後いつでも、彼の魂を監視できるということにも繋がりますし」
“ ん? アドルフさん、意外と腹黒い”
「君の取り扱い方法については、息子からよく聞いていましてね」
一瞬、間が出来る。
“ ……リュウの野郎”
「並大抵のやり方では留めておけないそうなので、自分から来てくれた今がまたとないチャンスなんですよ。分かるでしょう?」
“ まあ、理屈では”
ただなあ、と呟いたタツキの姿が、ほんの少しだけ、シェリーにも見えた。気だるげに肩を回したひとときだけだが、シェリーは思わず走り出しそうになる。
“ どっちにしても、オレ、ずっとはいられないよ。あちこち行ったり来たりすることになる”
「と言いますと?」
“ 他にいなきゃいけないところがあるんだ。前に月の精にされたみたいに。それで離れるのはどうしようもねえからな。オレの意思じゃねえし”
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